- 作者: 杉森久英
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/12/10
- メディア: 文庫
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以前から気になっていたのと、最近かまびすしい「大連立構想」が語られる時、
「大政翼賛会の二の舞だ!」という批判の声を聞いて、
大政翼賛会とは何だったのか、という興味でこの本を含めて何冊か購入。
手始めに本書から読み進めた。
結論から言うと、大政翼賛会の概要を知るには物足りなかった。
というより、基礎知識のないまま読み進める本ではなかった。
というのも、本書の前半は筆者が中央公論社に勤めていた時のこと、
後半は、興亜部から文化部に異動し、読書運動に従事したことが書かれているからなのだ。
前段で書いたように、今大政翼賛会が語られる時は、政党がすべて解党して、
大政翼賛会に結集したために、議会の批判勢力が著しく減少し、その結果軍部の専行を招くことになった
という文脈で語られるからだ。
ところが本書を読むと、大政翼賛会は、政治運動ではなく、国民的な運動を起こそうとしたということが書かれてある。
今になってみれば、大日本産業報国会などと言われてもピンとこないのだが、当時はこのようなことが国策として行われていた、ということを再確認した印象。
大政翼賛会の概要を知るには不十分だが、実はその本の眼目はそこにはない。
筆者が大学を卒業して経験した様々な社会経験が克明に描写されていて、
昭和15年から18年くらいまでの世相が詳しく感じられる。
国民がいかに「新体制」を望んでいたかが伝わってくる。
時代状況の閉塞の中で、それなりに息抜きをしながらも、だんだんと、まるで真綿で首を絞められるように生活が苦しくなってくる。
その閉塞を打ち破るために、大きな期待をもたれて始まった大政翼賛会が、思いきっていってしまえば張り子の虎のような組織だったことも書かれてあり、意外な面持ちがする。
大政翼賛会とは何だったのか、もう少し調べてみたい。
何か関連する資料をご存じの方、教えてくださればありがたいです。