7月2日の朝日新聞より。洞爺湖サミットを目前に控え,食と石油の問題が
取り上げられていました。
「世界の食料生産は石油頼み。典型の日本の農林業は06年度,55年度の15倍の312万6000klもの石油燃料を使った。
機械化やハウス栽培などが依存を高めた。」
「肉1kの生産に必要な穀物量(トウモロコシ換算)は牛が11kで,豚が7k、鶏4kだ。
化学肥料や農薬の製造、灌漑、運搬などの石油消費まで考えると,
『農水産物という名の石油を食べている』と言っていいほどだ。」
肉をつくるのに,どれだけの穀物が使われているのか。改めて数字で眺めると大変なことが実感できます。
だから肉を食べるのをやめよう,というのはちと短絡的な面もありますが,肉食を減らしていくことは課題になるでしょう。
こんなトマト農家の事例はどうでしょうか。
「栃木県栃木市のトマト農家、大山寛さん(57)も重油の値上がりに苦しむ。1haのハウス施設を家族とパートの計10人で切り回し、11〜3月は重油で暖房する。『ハウスを長期栽培仕様に立て替え、1億円も投資した以上、簡単にはやめられない』という。熱効率を高めるヒートポンプも入れ、重油節約に努める。
トマト1個(L玉200g)に使う重油は、年平均で約80ml(約65g)。重さでトマトの3分の1ほどが油の計算になる。
産地間競争を勝ち抜くため、大山さんは栽培期間を一般農家の1,5倍の9ヶ月に延ばすなどして,10aで24〜25tと県内平均の約2倍の収量を実現,経営を維持している。だが、一般のトマト農家では暖房が必要な月に重油代だけで売上げを上回ったところも多いと,JA全農とちぎ。JAはこうした農家に,暖房はやめ,本来の旬である6〜8月に栽培時期をずらすように勧め始めた。」
トマトを年中出荷するために,このような栽培方式になるのですね。
トマトの3分の1が油だなんて,ブラックユーモアにすらなりません。
鴨川のバラ農家さんも,ヒートポンプを入れたりして重油の値上がりへの対策をとっていました。
バラも加温しなければならないので、コスト管理が大変だそうです。
大山さんも,栃木県では優良大規模農家なのでしょうが,農業で生計を立てるということはこれほど厳しいことなのですね。
JAが旬の栽培を進めているとのことですが,旬のトマトは安いのです。
安いトマトの価格補償など,ある訳がない。
ああ農業。どうして農作物はこんなに安いのですか?そんなため息が出ます。
さらに、採卵農場ではどうでしょうか?
「長さ100m、電車の車庫と見まがう鶏舎5棟に40万羽。餌やりも空調もコンピュータ制御で、わずか二人で管理する。生みたての白い卵はベルトに乗り隣接のパック工場に整然と送られる。
群馬県東吾妻町,榛名山近くで採卵農場を経営する雪平幸男さん(63)は『家畜の食べる分が燃料にとられるとは。ほんの2年で時代が変わったようで』という。
一帯は10年ほど前、農業振興策で山を切り開いた畜産基地だ。酪農や養豚などとともに首都圏の食卓を支える。飼料はどこも米国産。関係者は,『うちの(エサ)畑は米国にある』と冗談をいってきた。
畜産は,家畜の体内で植物性タンパク質を動物性タンパク質に変える営みだ。卵の場合,1個60gの卵のためには120gの配合飼料を食べる。飼料代は石油代替のバイオ燃料ブームもあり高騰。2年前,卵の生産費用の45%だったのが今は65%を占める。
雪平さんは効率化を追求,大手スーパーなどへの安定供給に専念してきた。だが、店頭に190円前後で並ぶ10個パックでは1パックの利益が1円未満の状態になっているという。『もう効率化の余地はない。だが、生きものを抱える以上、システムを止めることもできない』」
でた!大規模採卵工場!!
40万羽を二人で管理!ちなみに、自給的農家の場合は一人で400羽が限界だとされています・・・
最後の雪平さんの『もう効率化の余地はない。だが、生きものを抱える以上、システムを止めることもできない』という言葉は行き着くところまで行ってしまったな,という感があります。
王国は小さな農場のため,農業機械に使う石油燃料は1月に20リットルくらいですが,
それでももしこの燃料が手に入らなければ・・・と思うと愕然とします。
この点からは,天ぷら油からつくるバイオディーゼルなども、実現の必要を感じます。
石油なしで王国農園を維持できるか?
後10人以上無給!スタッフがいれば,何とかなるかもしれません。
でも、その確保ができなければ,必然的に農業は家族形態に戻り,
自給自足的経営が中心になるでしょう。
大地主はいないとしても,大企業が土地を所有し,
その企業の従業員として馬や牛を使って耕作しているかも。
ああおそろしい!
なるべく石油への依存を少なくする生活がしたい。
それがほんのわずかでも。
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