「三国志」雑感

来月にいよいよ、宮城谷昌光氏の三国志が完結するようで、
それを勝手に記念してまた一巻から読み返し始めた。

本作では、劉備玄徳は一巻目から登場せずに、一巻の半ばから曹操のおじいさんにあたる曹騰が出てくる。いわば、いわゆる三国志の前段にあたる物語から始まるのだ。
細かい内容は省くけど、それにしても人間の業というものは全く深いし、
この頃の人間も今の人間とあまり変わらないのではないか、と思うことしきりだ。
基本的には王朝の物語なので、一般庶民が描かれているわけではないけれど、
皇帝の外戚が行う恣意的な政治、それにぶら下がる宦官、官僚たちの姿。
どうしようもない、と思って現状にあきらめてしまう人々。
でも、そんな中でも、自分の命をかけて諫言する何人もの人の姿が描かれる。
しかも悲惨なことに、諫言した人々はほとんど殺されたり、自死を選ぶよう迫られたりする末路を辿る。
それでもあきらめない人々が、歴史を作っていったのだな。
今の自分の生活からは想像もできないような生活だが、
単なる勧善懲悪でない宮城谷三国志からは学ぶことが多い。
現状にとどまる人々のことを非難できないし、私もそっちの立場になってしまうかもしれないけれど、
信念を貫き通した人々の心に思いを致していたい。

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