- 作者: 布施克彦
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/12
- メディア: 新書
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「昭和30年代」というと、
憧憬を持って眺められることの多い時代である。
私などは、まったく想像がつかないのだが、
映画や新聞、TVが描く世界からすれば
牧歌的であり、希望に満ちた時代であったように思っていた。
「それだけじゃないよ。
大変なこともたくさんあったのだ。」
ということをデータに基づいて、
懇切丁寧に解説してくれている。
筆者は団塊の世代。
自分が育ってきた経験と、
統計を元に説得的な議論を展開する。
3畳一間に親子8人で寝ており、
乳児が圧死した事件があった。
3畳に8人?
今なら、一人で寝るのも狭い、と思うくらいの広さだ。
こういうところで暮らしている人たちがたくさんいたのだ。
高度経済成長が始まっているにもかかわらず、
経済評論家は悲観的な意見が多い。
テレビの台頭は、現代のネット革命に通じる議論がすでに
なされていた。
そういう事情の中、筆者は結局何が言いたいのかというと、
「憧憬という抽象的な感情で
判断するのではなく、具体的な事実に基づいて
判断せよ。
今の日本は大丈夫だ。明日へ向かう活力がある。」
ということだろう。
私自身、おこがましいが、まだまだこれからが
スタートだという思いでいるので、
この結論に異論はない。
当然そうだと思われるようなことも、
鵜呑みにしないで一歩はなれてみれば、
物事を冷静に見られるのかもしれない。
引用しておきたい文章がある。
「就職難も影響しているのだが、農業を志す若者が目立つ。
人口減少に悩んできた僻地の集落の魅力を若者が再発見し、
過疎地の活性化に役立っているという話も聞く。
自然と共生しながら築く生活の営みに、惹かれる若者がいる。」
こんなどんぴしゃのことを書くなんて、
筆者は、ひょっとして増刊現代農業http://www.ruralnet.or.jp/zoukan/index.html
を読んでいるのではないだろうか?