発酵道

発酵道―酒蔵の微生物が教えてくれた人間の生き方

発酵道―酒蔵の微生物が教えてくれた人間の生き方

書庫にあったこの本を,ふと手に取りました。
自然酒五人娘 発芽玄米酒むすひ 香取 蔵元 寺田本家のお酒は,アースデイなどのイベントで
しょっちゅう口にして,とくに醍醐のしずく,発芽玄米酒むすひなどは大好きなのです。

この本は,その寺田本家第23代当主寺田啓佐さんが書かれた本です。
婿入りして,会社をなんとかしようとあれこれ手を出して,社員が悪い、社会が悪いと奔走しているうちに,腸が腐る病気になってしまい,入院。そのとき,「自分の生き方はこれでいいのか?」と考え始めたそうです。
そこで、いかに自然との関わり方を見直すか,という視点から「発酵するとくさらない。人間の生き方も腐敗するか,発酵するかの二つだ。発酵する生き方をしていこう」と思われたそうです。

発酵は,微生物の働きによって起こります。
では,その微生物はどんな生き方をしているのだろう?
酒は,微生物が次々と入れ替わる(バトンタッチという表現を使っています)ことで、その成分を変えお酒となります。

その働きを見ていると,寺田さんは,微生物が自分らしく生きていて,楽しく,仲良く働いているように見えるそうです。
本を読んでいると,そんな寺田さんの気持ちが伝わってきます。
実際にお会いしたこともあるのですが,柔和な笑顔が思い出されて,ほこっとした気持ちになります。

最近自分の将来,王国の将来をどうしようか,どうなるのかと考えていたときに、この本の言葉は大きかったです。

”自分を後回しにする生き方をしてゆく”
”自分のことばかり考えるな。自分の都合は捨てろ。相手の喜ぶこと,まわりが喜ぶことを第一に考えなさい”

この二つの言葉は,言い古されたようで,今はなかなか実践していない考えでした。ふりかえれば、自分優先に生きてきたことが多いです。

”あなたのお酒は,お役に立ちますか?”

というのは、ある人から寺田さんにいわれた言葉ですが,これはそのまま私にも通じる言葉です。私の仕事は,誰かのお役に立っているだろうか。王国に来てくれる人たち,関わる人たちのお役に立っているだろうか。意識していきたい言葉です。

”温度や湿度など,物理的に同じ条件であっても,造り手によって全然違う酒ができるし,たとえ同じ造り手であっても、そのときどきの感情によって微妙な違いが酒には出てしまうのだ。だから私が酒を造る場合,私以上の酒はできない。自分が偽物であれば,偽物の酒しかできない。どうあがいたって、その人以上の酒はできないのだ。”

これは、仕事にも通じるし,田んぼや畑にも通じる言葉だと思います。自分に甘えがあって,あまり野菜に手をかけてやらなかった時,野菜たちが切ない姿になっていたことを思い出します。家で飼っている犬に対しての思いも,そのまま私の感情が彼に伝わっている気がします。野菜が元気に育つのは,技術に加えて私がどんな人間か,どんな思いで接しているのかが大きな影響を与えるのかもしれません。

寺田さんが出会った石川洋さんは,「感謝にまさる能力なし」といい、こんなことを言っていたそうです。今日はこの言葉を締めくくりとして終わります。

つらいことが多いのは
 感謝を知らないからだ
苦しいことが多いのは
 自分に甘えがあるからだ
心配することが多いのは
 今をけんめいに生きていないからだ
行き詰まりが多いのは
 自分が裸になれないからだ

どんなことにも感謝できる生き方をしていきたい。
見渡せば,まわりのすべてに感謝できるじゃないか!

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