ゆるくつながる

年末に、鴨川市ふるさと回帰支援センターhttp://furusato-kamogawa.net/と自然王国と共同で、東京のふるさと回帰支援センターhttp://www.furusatokaiki.net/でセミナーをする計画を進めているので、市役所に行って来た。

鴨川市のセンターは、帰農者セミナーというのをずっと行っていて、最近では定年者だけではなく子育て世代もたくさん参加しているのだそうだ。様子を聞いてみると、行政で準備したことだけをやるのではなく、参加者同士で意見を出し合ったりして、セミナーを作り上げて行っているそうだ。これは、自然王国のイベントとも共通することだ。お客様として接するだけでなく、ともに自然王国を作って行くサポーターとして活動している。一般的に、サービスはなるべく無個性化し、均一化して進めて行くものだけど、このセミナーは、主催者と参加者が結び合って進めているようだ。

ふと気になって、自宅の書棚から、久しぶりに内山節さんの講演録「未来についての想像ー農ある世界への構想」(農文協2009)を手に取った。

要約すると、私たちはこれまで、市場との関係を、消費者として、労働者として結び合い、金銭を介したやり取りをしてきたが、その結果として、自分たちの労働を作り出せなくなった。その点、農村では未だ自然と人間とが相互に結び合った関係を作れていて、その中でこそ、個人が、個体ではなく相互性の中の個人で在れる。そしてこれからは、生命の結びつきがはっきり見えるローカルな世界、つまり「私たちはこういう関係、こういう結び合いの中で、ここに足をつけて生きている」といえる場所を作り、そこで生命同士の連帯のあり方を掴んでいく必要がある、というのだ。

今、鴨川市の帰農者セミナーも、自然王国のイベントも、そんなローカルな世界を目指しているのではないかと思う。

市役所との打ち合わせを済ませて帰宅した後、船橋に住む友人夫妻が1歳になって少しの双子を連れて訪ねてくれた。「時間が空いたので鴨川に行きたくなって」とわざわざ寄ってくれたのだ。今年の1月以来の再会なので、子どもたちが本当に元気でニコニコしている様子を見させてもらって嬉しかった。そんなに長くはいられなかったのだけど、彼らと、ふと寄りたくなってもらえるような関係であれることがとても幸せだと思った。イデオロギーや利害関係でなく、ゆるくつながっている関係があることが幸せで、これこそが私にとっての「ローカルな世界」なのだ。

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