いま「食べること」を問う―本能と文化の視点から (人間選書)
- 作者: 伏木亨,山極寿一,サントリー次世代研究所
- 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会
- 発売日: 2006/12
- メディア: 単行本
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先日の帰省時に梅田堂島のジュンク堂書店にて購入。
書店には、思わぬ本と出合えることがあるのでそれが楽しみでもある。
本書は、栄養学者の伏木亨と人類学者の山極孝一が、
食の世界で活動するゲストと鼎談したもの。
「食べる」ことの意味は、栄養学的に言えば、
生命維持のために栄養素をとることである。しかし、
現代ではそれ以上の意味が問われている。
人間は「脂・砂糖・だし(アミノ酸)」には無条件においしく感じるそうだ。
マヨネーズが好きな人が多いのも、サラダ油のおいしさに
ひかれているのかもしれない。
嗜好がわかりやすいものにかたより過ぎているのでは、という警鐘。
ラーメン、焼肉、中華料理、とんかつ。う〜ん、油ばっかりだ・・・
山極は、食の「社会性」に着目しなければならないという。
食物を分配する生物は、人間だけだそうだ。
そこから、育児の分担が始まり、食に関わる「社会性」が
生まれてきた、とする。
現代の食の危機は、食で密接につながっていた人間関係が
断ち切られていることにある。
どこで採れて、誰が作って、どこで食べるか、という食のつながりが
断たれてしまい、それを想像することが困難になってきている。
そこで、「食育」で何を教えるのかについては、味を伝えることもあるが、
食を文化としてとらえなおし、食のつながりを教えるべきで、
伝統的な食事に主体的に参加する経験を積ませるべきと主張する。
実は、この本で述べられていることは大体王国でやろうとし、実際に
やっていることと重なる部分が多かったのだけど、各界で活動している
人々も同じような考えを持っていることを知ったことは大きかった。
味覚が2〜3歳で決まってしまうというのは恐ろしいけど、
ちょうど今子供が1歳半なので、まだ間に合う。
特別なものを食べさせることが必要なのではなく、親が食べているものに
少し手を加えてやるだけでよい、というのは安心だ。
さらに、3歳〜8歳までは、親と一緒に食事をする回数が多いほうがいいという。
生理としての食は簡単に壊れてしまう。
忙しくなって、孤食になって、適当に物をつまむだけにすると
際限なく食べ始めたり拒食になったり、精神にも影響するようだ。
親と一緒に食事をする回数が多ければ、その後の関係作りにも役立つそうだ。
どのような調査をしたのかわからないけど、私の今の状況では
親子で食事できる機会は多いから、なるべく大切にするようにしよう。
「食べること」を問うことは、王国活動にとっても大きな意味を持つと思う。
ミツヲさんがやってきて畑を始め、今ではイベント、帰農塾ともに王国産の野菜を
提供できるようになってきている。
帰農塾の感想では、「食事がおいしかった」という感想をたくさんもらっている。
何気ないシンプルな味だけど、作っている場所との密接な関わり、
食べている場所がおいしさを増してくれているのだろう。
この地方伝統の食事が提供できているわけではないけど、
地元の人に学びながら王国ならでは「食」を提供していきたい。
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